blog 迷子のままに:

山下耕平(やました・こうへい)
NPO法人フォロ事務局長、不登校新聞社理事など。

不登校、ひきこもりなどを中心に、書いてます。
一部は「なるにわブログ」から引き継いでます。

   

渦中の人に届く言葉があるとすれば……

夏休み明けの自殺問題をめぐるキャンペーンについて、もやっとしたことを、もやっとしたまま書いた(entry/96)にもかかわらず、いろいろ意見をいただいて、ありがたかった。そこで気づくところがあったので、もう少しだけ書いておきたい。

私が、何よりもやっとしていたのは、それが渦中の人にどう響いているのか、ということだった。その「音」は、渦中の人にとっては、あまりに大きすぎるのではないか、と。その後、意見をいただいて気づいたことがある。

「逃げて」「死なないで」といった言葉は、いま、渦中にある当事者に向かって発せられているにもかかわらず、顔の見えない、不特定多数に向かって繰り出されている言葉でもあった。たぶん、私がもやっとした要因は、そこにもある。何というか、言葉の目が粗いのだ。

これが、学校関係者だとか、児童館や図書館の職員だとか、親だとか、周囲の大人に向かってのみ発せられたものであれば、そこまでもやっとはしなかったかもしれない。「音」は大きくてもよいだろうし、目が粗くても、わかりやすくある必要もあるだろう。しかし、それが渦中の当事者にとってどうかと言えば、やはり懸念のほうが大きくなる。


生身の声で、何かを人に伝えようと思ったら、その人数はかぎられる。どんなに多くても40人ぐらい、無理がないのは、10人ちょっとぐらいまでじゃないだろうか。マイクを使って声を増幅して、多くの人に届けようと思えば、1000人ぐらいまでは届けることができるかもしれない。でも、マイクを使って大人数を相手に話そうとすると、生身の声で届く範囲で話をするときとは、伝えられることの質は変わってしまうように思う。どうしても、言葉の目は粗くなる。あるいは、言葉以前の息吹のようなものが、そこでは抜け落ちてしまう。

マスメディアを通じて、あるいはネットを通じて、多くの人に何かを伝えることもできる。でも、増幅されればされるほど、やはり言葉の目は粗くなってしまうように思う。多くの人に届きやすい、「音」が大きくて目の粗い言葉を発するときは、その宛先を考える必要があるのではないだろうか。

少し観点を変えると、たとえば「生きづらい」というとき、自分の声が生身の範囲に響いていない、受けとめられていない、というところから来る場合もあるように思える。それゆえに、ネットなどで承認を求めることもあるのだろう。しかし、その空虚さは、どれだけ増幅された範囲で認められたとしても、満たされないのではないだろうか。逆に言えば、生身の範囲で自分の声が響いているという実感があれば、むやみに増幅して多くの人に届けたいとは、あまり思わないような気もする。

そう言いつつも、私自身、ブログに記事を書いたり(まさに、この文章も!)、ネットで自分の編集した記事を掲載したりしているし、「いいね!」の数だとか、アクセス数は気になる。そんなカッコよく泰然としているわけでは、まったくない。でも、そのあたりの自覚は必要なことのように思う。

いま、苦しんでいる渦中にある人に届く言葉があるとすれば、どんな言葉なのか。語られる内容の問題だけではなく、そこでは、言葉の目や響きの問題が大事なことのように思う(もっと言えば、届くものがあるとすれば、それは言葉以前の何かなのかもしれないと思う)。よくよく自戒しておきたい。

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プロフィール

HN:
山下耕平
性別:
男性
自己紹介:
埼玉県生まれ。大学を中退後、フリースクール「東京シューレ」スタッフを経て、1998年、『不登校新聞』創刊時から、2006年6月までの8年間、編集長を務めた。また、2001年10月、フリースクール「フォロ」設立時より、同事務局長を務める。2006年10月より、若者の居場所「コムニタス・フォロ」を立ち上げ、コーディネーターをしている(現在は「なるにわ」と名称変更)。2009年2月、『迷子の時代を生き抜くために』を上梓。

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