blog 迷子のままに:

山下耕平(やました・こうへい)
NPO法人フォロ事務局長、不登校新聞社理事など。

不登校、ひきこもりなどを中心に、書いてます。
一部は「なるにわブログ」から引き継いでます。

   

学校を選べるようになることはよいことか?

学校を選べるようになることはよいことか?

選べないよりは選べたほうがよい。それ自体はそうかもしれないとも思う。
しかし問題は、〈誰が〉〈何を〉〈どういう基準で〉選ぶのか、ということだろう。そのあたりを考えないで、ただ選べることはよいことだというのは、短絡的なのではないだろうか。

まず、〈誰が〉ということ。学校を選ぶというとき、それは保護者が選ぶのか、子ども自身が選ぶのか。「子どもの意志を尊重して」と言っても、子どもは親の意思を汲み取って、自分の意志と言っていることも多い。第一、財布のヒモは親が握っているのだから、親の意向を無視して子どもが選択できることはあり得ない。前提として、親に子どものことを尊重する価値観があれば理想的なのかもしれないが、多くの場合、親は子どもを自分の思うように育てたいと思ってしまっている。それが子どもの不登校などによって手ひどく裏切られて初めて、親は自分の価値観を問い直してきたのではなかったか。

次に〈何を〉ということ。学校外を選べるようにと言っても、それは〈学び場〉を選ぶということであって、学校の代わりに〈居場所〉を選ぶということにはならないだろう。しかし、私自身の経験で言えば、学校に行かなくなった子ども(親ではなく)がまず求めるのは、〈居場所〉だろうと感じてきた。それは逃げ場とも言えるし避難所とも言えるだろう。それを家に求める場合もあれば、家の外に求める場合もあるが、いずれにしても「選択」というのとは、ちょっとちがう。現状では、最初からフリースクールなどを「選んだ」という人は、ほとんどいないだろう。ただ、それでは、いつまでも本当はいてはいけない場だという苦しみから逃れられない、だからこそ、学校外の場が制度として認められるべきだ、という声もある(たとえば、多様な教育機会確保法「ここまできた!」報告会資料58p前北海さんコメントなど参照)。そういう声自体は否定できない。ただ、そこでも価値観が問われる。なぜ、逃げたり避難することが、否定されるのか。それを問わないで、それらの場所を〈学び場〉として認められるように求めるのでは、不登校から問われていることを遠ざけてしまうのではないか。また、フリースクールなどは〈学び場〉でなければ認められない、ということにもなる。現にあるフリースクールなどは、まともに活動しているのであれば、〈居場所〉でもあって〈学び場〉でもあるだろう。それが〈学び場〉としてでなければ認められないとなれば、それは〈居場所〉を損なうことにもなりかねないのではないか。とくに家庭が〈学び場〉でなければならないとなるのは、子どもを追いつめてしまうと強く危惧している。

最後に〈どういう基準で〉について。親は「よりよい教育」を求めるだろう。その「よい」とは何をもって「よい」とするのか。シュタイナー、サドベリー、フレネのようなオルタナティブ教育なのか、それとも、より高学歴に結びつく教育なのか、より効率的な教育なのか……いずれにしても、ここでも価値観が問われる。その価値観の相違を「多様性」や「選択」という言葉のみで、不問にしてよいのか。多様性とは、何でもありなのか。
選択肢を増やすことは、無前提によいこととはかぎらない。たとえば、高校や大学は選択肢が増えたが、そのことによって、子ども若者はラクになっただろうか。高校や大学のあり方はよくなっただろうか。よくなった面もあるだろうが、むしろ大勢としては、競争原理が働くことで悪化してきたのではないか。ウィッツ青山学園をはじめとする広域通信制高校の問題などは、その一例だろう。よくよく考える必要があるように思う。

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プロフィール

HN:
山下耕平
性別:
男性
自己紹介:
1973年、埼玉県生まれ。大学を中退後、フリースクール「東京シューレ」スタッフを経て、『不登校新聞』創刊時(1998年)から8年間、編集長を務めた。2001年、フリースクール「フォロ」設立時より、同事務局長を務める。2006年より、同法人で18歳以上の人の居場所を始め、コーディネーターをしている(なるにわ)。2012年より関西学院大学で非常勤講師。著書に『迷子の時代を生き抜くために』(北大路書房2009)。野田彩花さんとの共著に『名前のない生きづらさ』(子どもの風出版会2017)。

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