blog 迷子のままに:

山下耕平(やました・こうへい)
NPO法人フォロ事務局長、不登校新聞社理事など。

不登校、ひきこもりなどを中心に、書いてます。
一部は「なるにわブログ」から引き継いでます。

   

立法チーム条文ヒアリング報告(自分の部分のみ)

昨日、「多様な教育機会確保法案」の立法チームのヒアリングに参加してきた。今回は、条文についてのヒアリングということだった。私以外は、中井敬三(全国都道府県教育長協議会会長)、志村修(千葉市教育委員会教育長)、奥地圭子(フリースクール全国ネットワーク代表理事)、西野博之(NPO法人フリースペースたまりば理事長)の各氏。
まず、政治情勢からいうと、21日の立法チーム会合から、条文のとりまとめ作業に入るとのことだった。ただ、現時点でも、立法チームのなかで意見にかなり相違があり、条文がまとまるのかどうかは、わからない状況もあるように感じた。
私が申し上げたのは、下記6点。

*  *  *


1.基本理念・目的について

 第一条に「児童の権利条約の趣旨にのっとり」と入ったこと、二条に「普通教育を充分に受けていない者の意志を尊重し」と入ったことなどは重要だ。


2.個別学習計画について

しかし、個別学習計画については懸念が大きい。立法チームに要望書も提出されているが、これまで幾人もの親御さんから、子どもが不登校になると、親は焦って勉強などで子どもを追い詰めてしまうこと、個別学習計画が親の不安を煽って子どもを追い詰める結果にならないか、自身の経験上の悔悟とともに懸念が示されている。


3.多様な教育機会として、家庭は外すべきではないか。

不登校の家庭で、地域で孤立している家庭は多い。子どもも親も学校を中心とした関係のなかで生きているため、不登校になると、子どもだけではなく、親も関係が断たれてしまう。その孤立状態が、さまざまな問題を引き起こしている。不登校の親の会や、フリースクールなどは、地域で孤立してしまった親子が、地域を越えた関係を回復することに役立ってきたと言えるが、文科省の調査では、フリースクールに通う児童生徒は4200人、不登校全体の3.5%に過ぎない。大半の不登校の家庭は孤立状態にあると言える。家庭が孤立している状況のなかで、自宅までを範囲として多様な学びを認めるということに、現状では無理がある。それが、個別学習計画への懸念に現れている。
長期欠席のなかには、家庭が孤立したまま、過酷な状況に置かれている子どもたちがいることを忘れてはならない。そして、過酷な状況の人ほど声をあげられずにいることを肝に銘じないといけない。

この法案が理念法で、現実を変えていく一歩とするのであれば、多様な教育機会から自宅は外すべきではないか。この法案の理念に逆行した現実を引き起こさないためにも、慎重に考えるべきだ。


4.相談体制について

第十一条に相談体制の整備とあるが、努力規定になっている。実際問題として、教育委員会が、個々の家庭をフォローアップすることは、実務的に可能なのか? 高校進学の調査票や健康診断など、学校が持っている機能を実務的にどこまで教育委員会ができるのか?

いまの学校が、あまりに抱え込みすぎてきたことは問題だ。学校復帰前提であるがゆえに、かえって手が届かず、関係の切れてしまっている家庭が多くあることも問題がある。教育を多様化する必要はあるが、充分な相談体制を欠いたまま、人的にも環境的にも厳しい状況にあるフリースクールや、ましてや家庭で抱え込むことになれば、それは危険と言わざるを得ない。


5.夜間中学校について

資料に、鳥居さんという方の資料を入れた。くわしく紹介している時間はないが、虐待を受け、親の自殺をみとるなど過酷な状況を生きてこられた20代の女性だ。鳥居さんは、義務教育を学び直したい、しかし形式卒業者であるため、これまでは無理だった、そして、いまの夜間中学校は、見学に行っても外国人の日本語習得のニーズが多くなっていて、自分のニーズとは合わないということを言っている。


6.二重学籍を問題視するより、すべての子どもに多層的な関わりを

この法案を必要とする背景のひとつに、二重学籍の問題があげられていた。しかし、実際上、教育委員会が修了認定をするのであれば、解消しているとは言えない。そうであれば、無理に学籍を選択にかける必要があるのか? この間、内閣府の調査で、子どもの自殺は9月1日が圧倒的に多いという結果が発表された。これは現場の実感にも沿うものだ。しかし、自殺の抑止という観点からも、籍を抜いて別の学び場へということは、渦中の当事者の耳には届きにくいのではないか。渦中の当事者に何より必要なのは、とにかく休むことだ。休む、その場から逃げる、距離を置くということと、選択肢として選ぶということには、開きがある。

二重学籍を問題にして選択肢を増やすよりも、どの子にとっても、学びや居場所が多層的にある制度設計が望ましいのではないか。そういう層のひとつとして、フリースクールを公共的に位置づけることもできるのではないか。しかし、それは条文への意見を超えてしまうので、以上にとどめる。

*  *  *

ほかの方からの意見、議員のやりとりなど、報告したいことはいろいろあるが(とくに教育委員会からの懸念については具体的なものがあった)、時間的・体力的余裕がないので、とりいそぎ自分の発言についてのみ、ご報告。
(山下耕平)

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無題

  • by あき
  • 2015/08/19(Wed)22:55
  • Edit
山下様
この間、「多様な教育・・・法」のことで、頭と心がいっぱい、いっぱいでした。
一生懸命推進されている方が、善意であり、不登校の子ども達の為に長年、ご尽力されてきた方たちなので、本当に、身体が引きちぎられるような苦しさで、しかし、思いや考えがまとまらず、本当に苦しい日々でした。

山下さんの、このブログで、やっと、目が覚めた思いです。

なぜ、あれ程までに、子ども達に寄り添ってこられているのに、今、こんなにも、懸念や不安が当事者や関係者の中にあるのに、その不安に丁寧に寄り添うのではなく、切り捨てるかのごとく、突っ走っていこうとするのでしょうか?まだ、そんなモヤモヤとした思いは残りますが、今回の国会でこの法案を通すことだけは、絶対にやめてほしい!
その思いは、はっきりしました。

無題

  • by 山下耕平
  • 2015/08/20(Thu)00:09
  • Edit
ていねいなコメント、ありがとうございます。この法案をめぐっては、本当にいろんな思いが交錯しています。それを対立にするのではなく、真摯に対話して、考え合っていくことが必要だと思っています。拙速は避けなければならないと、私も思っています。(山下耕平)

プロフィール

HN:
山下耕平
性別:
男性
自己紹介:
埼玉県生まれ。大学を中退後、フリースクール「東京シューレ」スタッフを経て、1998年、『不登校新聞』創刊時から、2006年6月までの8年間、編集長を務めた。また、2001年10月、フリースクール「フォロ」設立時より、同事務局長を務める。2006年10月より、若者の居場所「コムニタス・フォロ」を立ち上げ、コーディネーターをしている(現在は「なるにわ」と名称変更)。2009年2月、『迷子の時代を生き抜くために』を上梓。

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